たった一足の靴が人生を変えると教えてくれた人の死
講演やセミナーでよく登場していただく80代の利用者様キヨコさんが、先日亡くなりました😓
たった一足の靴が人生を変えるのだと、身をもって私に教えてくれた人。
これは、徐々に歩けなくなる進行性の疾患にかかってしまったキヨコさんの、歩行練習をしていた時の話。
「杉田さん、私もう一度ハイヒール履いてみたい」
室内壁伝いの歩行でもよろめいて、転倒の危険があるレベルのキヨコさん。
ハイヒール???😳
と、戸惑っていると、
キヨコさんは疾患特有のゆっくりした口調で、これまでの人生を語ってくれたのでした✨
東京の高級住宅街で育ったお嬢様。親の反対を押し切って丸の内のOLとしてバリバリ働いていた20代。そして、結婚。お相手は自分とは全く違うタイプの北海道出身の野生児(キヨコさん談)で、結婚してすぐに北海道移住を提案され、これまた親の反対を押し切って来道。3人の子育て、義父母の看取り、8人の孫の面倒を見た日々。
振り返ると、全く後悔はないけれど、もう一度ハイヒールを履いておしゃれをして、颯爽と歩きたい・・・と☺️
そこから、ゴールを『ハイヒールで円山表参道のカフェに行く』とし、
5段階のStepを作り、毎日の訓練スケジュールを立てました❣️
足首の可動域も、下肢全体の筋力も、何よりも疾患の特徴である立位バランス不良も・・・と、アプローチする部分は多く、ましてハイヒールを履くためにはさらに内容を足す必要がありました。
足を正確に計測し、幅狭でさらに左右で違う変形のある足には市販のハイヒールでは合わず、ネットで注文できる靴を探し、それに手を加える方法を取りました。
毎日の宿題トレーニングと週3回の私のトレーニング。80代の女性にはきっときつい毎日だと思います😅
でも、
それから、キヨコさんの表情は見る見るうちに変わっていきました💕✨
最初はワクワクしてるんだろうと気分の問題だと思っていましたが、そうではないことに気づきました。
常に足を動かす方向や距離、角度を意識することで、足から入る刺激が身体全体の循環を改善させたり、脳を活性化させたりしている仮説を持ちました。
Stepを踏んでいく毎に、姿勢が変わり、表情が変わり、これまで面倒がって読まなかった本を読んだり、料理に凝るようになったり…と、生活は本当に充実したものになっていきました✨
これには、ご主人もびっくり!
ハイヒールなんて無理するな・・・と言っていたご主人も何だか前より幸せそう。
ご夫婦の関係が新婚さんみたいな感じです💕
そして半年後。
疾患の特徴を考えると、歩けなくなっていてもおかしくないのに、
赤いハイヒールを履いて、円山のカフェに行くことができたのでした。
ただし、独歩は難しく、ご主人と腕を組んでのハイヒールでした👠
もちろん、お二人ともこの日のためのおしゃれをして。
カフェも予約して。
あれから3年。
キヨコは最後まで赤いハイヒールを近くにおいて幸せそうだったと、ご主人がお手紙で教えてくれました。
キヨコさんの死はとても悲しいけれど、
とても素敵な経験をプレゼントしてくれたのだと思っています。
心からご冥福をお祈りいたします。